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2024.03.25
CCUS(CCU/CCS)

技術の概要

CCUSとは、火力発電所等から排ガス中の二酸化炭素(Carbon dioxide)を分離・回収(Capture)し、有効利用(Utilization)、又は地下へ貯留(Storage)する技術。特にCCSの技術を活用することで、大幅なCO2の削減を可能とするカーボンニュートラルな社会の実現が期待されている。
「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」(令和元年6月11日閣議決定)では、例えば産業部門の目指すべきビジョンにおいて、脱炭素化ものづくりを実現する具体的な方向性として、第1にCO2フリー水素の大規模活用、第2に温室効果ガス排出を避けられない場合が残ることを見越して、それらが大気中に蓄積される前に分離し、回収し、貯留する、あるいは、有価物の原料として活用する CCS・CCU技術の採用が考えられるとしている。
CCUとしてはどのようなものがあるか、CO2の利用用途などから区分して整理した一例を表1に示す。

図1 CCUSとは

図1 CCUSとは
出典:「環境省CCUS事業の概要」(平成31年3月5日)などより作成

表1 CCUの用途等からみた分類例

表1 CCUの用途等からみた分類例

出典:IEA “CCUS in Clean Energy Transitions”(2020)、科学技術振興機構研究開発センター「二酸化炭素資源化に関する調査報告」(2019)、経済産業省「カーボンリサイクル技術ロードマップ」(令和元年6月)、特許庁「平成29年度特許出願技術動向調査報告書(概要)CO2 固定化・有効利用技術」(2018)などを参考に作成

これらCCS・CCU技術の概要や留意点を、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」(令和元年6月11日閣議決定)より抜粋して、表2に示す。

表2 CCS・CCUS技術の概要・留意点等

表2 CCS・CCUS技術の概要・留意点等

出典:「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」(令和元年6月11日閣議決定)より作成

経済産業省資源エネルギー庁は、CO2を資源として捉え、これを分離・回収し、多様な炭素化合物として再利用するカーボンリサイクルに係る技術は、将来有望な選択肢の一つであり、そのイノベーションを加速化していくことが重要であるとして、2019年6月7日に「カーボンリサイクル技術ロードマップ」を策定した。同ロードマップでは、2030年を比較的短期のターゲットとして、2050年以降を中長期のターゲットとしてスコープを定めている。2030年に向けては、CO2利用環境の確立(に向けた技術開発)とともに、水素の低コストでの利用を前提としない一部の用途について、2030年頃からの普及がロードマップの中で示されている。また、経済産業省が2020年12月25日に策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、重点分野における実行計画として、現状と課題、今後の取組方針とともに、2050年までの時間軸を持った工程表が提示されているが、「カーボンリサイクル産業」では、「コンクリート」、「燃料(藻類の培養によるバイオ燃料)」、「化学品(人工光合成によるプラスチック原料)」、「分離回収設備(排気中CO2の分離回収)」が対象として示されている。

表3 「カーボンリサイクル技術ロードマップ」におけるスコープ

表3 「カーボンリサイクル技術ロードマップ」におけるスコープ

出典:経済産業省「カーボンリサイクル技術ロードマップ」(令和元年6月)より作成

廃棄物分野における取組状況(日本)

現在、焼却施設については、例えば以下のような取組がなされている。排ガスからのCO2の分離回収では、比較的低いCO2濃度に対応して熱エネルギーを用いる「化学吸収法」が適用されているが、CO2濃度の変動のほか、塩化水素等の成分が含まれることへの対応のために前処理が必要となり得る。
なお、農業利用の観点からは、必ずしもCO2の濃度を高度に高める必要はない。木質バイオマス発電所の場合には、隣接する野菜の大規模栽培施設に、電気及び熱に加えて浄化した排ガスからCO2を供給している事例(株式会社サラ、岡山県笠岡市)もある。

表4 廃棄物分野における取組状況(日本)

表4 廃棄物分野における取組状況(日本)

1 環境省 二酸化炭素の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業
出典:日本環境衛生センター「令和元年度廃棄物処理システムにおける低炭素・省CO2 対策普及促進方策検討調査及び実現可能性調査委託業務報告書」及び経済産業省資源エネルギー庁「カーボンリサイクル技術事例集」などより作成

他方、メタン発酵施設において発生するバイオガスは、CO2濃度が焼却施設と比べて高い一方、バイオガスに含まれるメタン濃度を高めるためにCO2を分離することに意義があり得る。分離方法としては、例えば「膜分離法」は、焼却施設に現在適用されている化学吸収法よりも一般に省エネ・低コストとなり得る。以上のことから、現時点では焼却施設に比べて経済面で有利にCO2分離回収できる可能性もある。

参考情報源

環境省・廃棄物資源循環学会「令和2年度第1回シンポジウム 地域循環共生圏形成における廃棄物エネルギー利用施設の果たす役割と可能性」(2020年8月5日)

  • 「CCU事業(二酸化炭素分離回収利用事業)の導入効果と将来計画」前田修二(佐賀市)
  • 「さまざまな排出源からのCO2分離回収技術」北村英夫(東芝エネルギーシステム㈱)
  • 「『脱CO2・循環型社会』に向けたIHIの取り組み~カーボンリサイクル技術の開発動向~」成相健太郎(㈱IHI)

廃棄物分野での適用の意義(可能性)と今後の取組

廃棄物分野でのCCUSの適用の意義としては、以下のような可能性があると考えられる。「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、今後の取組として、焼却施設排ガス等の活用については、革新的技術の開発や実証事業等を通じたスケールアップ、コスト低減等を図り、実用化に向けた取組を進めることとされている。

  • 脱炭素化社会においては、化石燃料の燃焼はできる限り回避される必要がある一方、廃棄物の焼却は、最小化が求められつつも適正処理の観点から回避が難しい部分が残る可能性が高いのではないか。将来も残る焼却施設からの排ガスについては、CCUSを適用することで大気中への排出を回避することが可能となる。
  • 焼却される廃棄物は、現状でもバイオマス由来が一定量を占めており、将来的には更にその割合が増大することが想定される。バイオマス起源の焼却排ガスを貯留することで、大気中に蓄積されたCO2を減少させる(「ネガティブ・エミッション」と呼ばれる。)ことが可能となる。ただし、ごみ焼却施設は火力発電所や高炉一貫製鉄所・セメント工場などと比べて規模が小さいことから、火力発電所や産業部門が行うCO2輸送・貯留活動に相乗りすることが現実的ではないか。
  • ごみ処理施設は全国に分散しており、小規模でも有望なCCU技術を開発して適用することができれば、地域の素材・資源※の供給施設ともなることも期待される。
    ※燃料化について:メタネーション(水素と反応させる技術)であれば、水素を直接に燃料として利用することは難しいがメタンであれば利用できるという、必然性のある利用用途が前提と考えられる。
  • 現在、基幹化学品の多くは化石資源を原料としているが、化学製品等の製造工程に廃棄物処理過程を組み合わせ、廃棄物が有するエネルギーの高効率での利用と併せて炭素を原料として活用できるようにすることで、産業の化石燃料からの脱却による炭素循環の実現に寄与し得るのではないか。