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2024.03.25
「3R+Renewable」の発展に向けて期待されるバイオマスプラスチックとケミカルリサイクル(フィードストックリサイクル)

「プラスチック資源循環戦略」に示された基本原則:3R+Renewable(持続可能な資源)

プラスチックの資源循環を総合的に推進するために、令和元年5月31日に政府が決定した同戦略では、基本原則について、①回避可能なプラスチックの使用の合理化、②再生材や再生可能資源(紙、バイオマスプラスチック等)への適切な切り替え、③できるだけ長期間の使用、④循環利用(リサイクルによる再生利用、それが技術的経済的な観点等から難しい場合には熱回収によるエネルギー利用を含める)を図ることが示された。
マイルストーンとしては、例えば、2035年までに使用済みプラスチックを100%リユース・リサイクル等により有効利用することや、2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入することなどが掲げられている。

「バイオマスプラスチック導入ロードマップ」

上記戦略の実現に向けて令和3年1月に策定された同ロードマップでは、①導入の基本方針、②プラスチック製品領域ごとの導入に適したバイオマスプラスチック、③政府の施策、が提示されている。
導入の基本方針においては、「原料の多様化を図るため、国内バイオマス(資源作物、廃食用油、パルプ等のセルロース系の糖等)の原料利用の幅を拡大(食料競合等の持続可能性に配慮)」することや、「使用後のフロー(リサイクル、堆肥化・バイオガス化に伴う分解、熱回収等)との調和性が高いバイオプラスチックを導入」することなどが示されている。

図1 バイオプラスチック製品の導入イメージ

図1 バイオプラスチック製品の導入イメージ
出典:バイオプラスチック導入ロードマップ ~持続可能なプラスチックの利用に向けて~
(令和3年1月、環境省・経済産業省・農林水産省・文部科学省)

重要となるケミカルリサイクル(フィードストックリサイクル)の可能性

新たなケミカルリサイクル手法への期待

「プラスチック資源循環戦略」では、資源・廃棄物制約、海洋ごみ対策、地球温暖化対策等の幅広い課題に対応しながら、アジア各国による廃棄物の禁輸措置に対応した国内資源循環体制を構築しつつ進めていく必要があることが示されている ¹。
プラスチック資源のリサイクル方式としては、プラスチックとして再生利用する材料リサイクル(マテリアルリサイクル)と化学原料に転換するケミカルリサイクル(フィードストックリサイクル)に大別されているが、国内で製造・流通されているプラスチック及び添加剤には多くの種類があり、リサイクル対象となる種類や混合状況などによって、各種リサイクル技術の適合性や経済性は異なり得る。ケミカルリサイクルに関して、プラスチック製品の原料である石油関連産業への循環の規模は、現在のところ他のリサイクル方式と比べて小さい。
一般社団法人日本化学工業協会では、化学産業ではGHG排出削減にも貢献する「廃プラスチックの循環利用の促進」は喫緊の課題であるとし、2020年12月18日には「廃プラスチックのケミカルリサイクルに対する化学産業のあるべき姿」を公表した。公表資料の中では、あるべき姿とその実現のための方策が示されている。それによれば、ケミカルリサイクルは、原料レベルで同一性能まで回復させた後に新たな製品として循環ラインに戻すことが可能なため、化学産業が貢献できる効果的な手法だと考えられており、モノマー化、ガス化、油化等による化学原料化(循環型ケミカルリサイクル)を対象として取り組むとされている。現状は廃プラスチック総排出量892万/年(2018年実績)に対して、循環型ケミカルリサイクル処理量は23万t/年となっている。これに対し、あるべき姿の目標として、2030年には150万t/年、2050年に250万t/年と示されている(図2参照)。

図2 日本化学工業協会資料における2050年あるべき姿

図2 日本化学工業協会資料における2050年あるべき姿
出典:一般社団法人日本化学工業協会「廃プラスチックのケミカルリサイクルに対する化学産業のあるべき姿 概要版」より引用

1 使用済みプラスチック資源の効果的・効率的で持続可能な回収・再生利用について、具体的には例えば次の点が示されている。
・分別・選別されるプラスチック資源の品質・性状等に応じて、循環型社会形成推進基本法の基本原則を踏まえて、材料リサイクル、ケミカルリサイクル、そして熱回収を最適に組み合わせることで、資源有効利用率の最大化を図ること
・国際的な資源循環の変化に迅速かつ適切に対応し、我が国のプラスチック資源の循環が適正かつ安定的に行われるよう、国内におけるリサイクルインフラの質的・量的確保や利用先となるサプライチェーンの整備をはじめ、適切な資源循環体制を率先して構築すること

ケミカルリサイクル手法の温室効果ガス排出削減効果

地球温暖化対策の観点からは、これらの新たなケミカルリサイクル手法の温室効果ガス排出削減効果も重要となると考えられる。上記「廃プラスチックのケミカルリサイクルに対する化学産業のあるべき姿」においても、あるべき姿の実現に向けては、基本理念においてLCA(ライフサイクルアセスメント)的優位を示せる高効率のケミカルリサイクル技術開発・設備化に言及されており、化学産業が目指すケミカルリサイクルが国民の理解を得るためには、環境負荷削減効果をLCA的に評価することが重要であるとしている¹。
なお、今後の研究開発に基づき実用化が期待される新たなケミカルリサイクル手法は、現時点では評価に用い得る商業的運転データが得られないが、最近の国外の研究では、言わば「理想的」な性能を仮定して、他の実用化された既存リサイクル方式と比較することで、新たなケミカルリサイクル手法の「温室効果ガス排出削減の可能性(ポテンシャル)」を計算した例もある²。

図3 日本化学工業協会資料における廃プラスチックリサイクルの流れ

図3 日本化学工業協会資料における廃プラスチックリサイクルの流れ
出典:一般社団法人日本化学工業協会「廃プラスチックのケミカルリサイクルに対する化学産業のあるべき姿 概要版」より引用

1 LCAにおけるCO2削減効果の評価は、循環利用により、何が代替されるのかで定まってくる。
・原材料の加工に伴いエネルギー使用や原材料のロスが累積するため、加工度の高いものを代替する方が有利となりやすい。⇒品質・収率が確保できる場合の材料リサイクルやモノマー化の優位性につながる。
・化石燃料の燃焼・酸化を伴う工程を代替する場合は、代替される化石燃料の炭素集約度が高いほど、削減効果が大きく評価される(石炭>原油>天然ガス)。電気は非化石の電源からも発電されるため、代替効果が一般的に大きくなりにくい。廃棄物エネルギー回収率が低い場合や電気の脱炭素化が進む場合はなおさらとなる。
2 例えば、Meys et al. 上述のように複数のリサイクル方式がある中で、それぞれの温室効果ガス排出削減等の効果の特性は、LCA(ライフサイクルアセスメント)と呼ばれる評価手法で定量的に分析されてきた。同論文もLCA手法を適用しているが、評価の対象範囲、エネルギーシステムや廃棄物焼却施設のエネルギー回収の地域間の相違、また、廃棄物の分別状況の設定などの前提によって計算結果は異なり得る。よって、国内の既存評価結果との比較を含め結果の解釈には十分な注意が必要であり、また、計算された数値自体は日本を対象とした場合と同じになるわけではないことに留意する必要がある。

バイオマス利用も含めたプラスチック循環

プラスチックの循環利用については、二酸化炭素排出削減効果に優れた材料リサイクルやモノマー化を適用するとともに、それが適さないプラスチックについては、石炭の利用が継続している期間においては石炭代替を図りつつ、石油精製などでの原料利用拡大を進め、バイオマスの原料利用と併せてプラスチックの化石資源依存率を低減していくことが、脱炭素化面からも期待される将来の可能性といえるのではないか。

図4 目指すプラスチック資源循環の姿

図4 目指すプラスチック資源循環の姿
出典:令和3年度戦略的研究開発課題(S-19)「プラスチックの持続可能な資源循環と海洋流出制御に向けたシステム構築に関する総合的研究」(東北大学教授 吉岡敏明)
https://www.erca.go.jp/suishinhi/koubo/pdf/r03_s2-19_gaiyou.pdf