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2024.11.12
岩手県久慈市で、ごみからエタノールをつくる実証。地域脱炭素と資源循環を目指す

環境省が募集している脱炭素先行地域(第2回)に選定され、温暖化対策や地域の資源循環に力を入れている岩手県久慈市。同市では、微生物を使って、廃棄物からエタノールを取り出すという画期的な実証事業が行われている。

脱炭素先行地域の取り組みの進捗状況について、久慈市企業立地港湾部 港湾エネルギー推進課の関本氏と島袋氏に、また、廃棄物を有効活用する実証事業について積水バイオファイナリー株式会社の加納氏、積水LBテック株式会社製造部部長の伊藤氏に詳しく話を聞いた。

 


はじめに、久慈市が脱炭素先行地域に取り組んだ背景について教えてください。

島袋氏 久慈市は岩手県の北東部に位置し、平成18年3月に旧久慈市と旧山形村(現在の久慈市山形町)が合併してできた市です。合併前から過疎地域に指定されている山形町の振興を目的に、環境省が募集する「脱炭素先行地域」の対象エリアとして申請し、選定いただきました。

全国の多くの地域と同じように、久慈市の行政課題は「人口減少と少子化」です。特に、山形町は令和2年度の久慈市全体の人口減少率が-23%(昭和30年比)であるのに対して-69%と大幅に人口が減っています。

人口の減少に伴って、地域経済が衰退し、地域医療や福祉・介護サービスへも影響が及ぶと懸念されています。また、担い手不足による地域イベントの縮小、廃止などのコミュニティへの影響や、バスなどの地域公共交通の経営が困難になったりするなどの影響も予想されます。

過疎化による地域課題の解決のために脱炭素先行地域のエリアを選定したということですね。

関本氏 そうですね。過疎化という課題を抱える山形町の全域で、電気の再エネ化を行うことで、地域経済の活性化を目指し、太陽光発電や風力発電の導入、木質バイオマス熱電併給システムの活用などを計画に盛り込みました。

 山形町には、廃校になってしまった小中学校があるため、その校庭を活用した地産地消型(オフサイト)太陽光発電設備の導入にあたっての補助制度の創設や、年間を通じて強い西風が吹くという特徴を活かして、陸上風力発電の導入に向けた補助制度の検討などを進めているところです。

 令和5年度の取り組みとしては、自家消費型(オンサイト)・地産地消型(オフサイト)太陽光発電システム、木質バイオマス熱電併給システムの導入を対象とする補助制度を施行し、申請事業者を募集しました。また、普及啓発にあたっては、山形町内の8地区を対象に地域説明会を実施、合計63名の市民の方々にご参加いただきました。

地域説明会ではどのような意見や質問が挙がったのでしょうか?

島袋氏 市民のみなさんからは住宅向け太陽光発電の設置にあたって、「どこの電気店に相談したらいいのかわからない」というご相談をいただいたので、市内の電気事業者の登録制度を創設し、登録事業者をWEBサイト上で確認できるような仕組みを作りました。また、「住宅用太陽光発電設置における自己負担額はどれくらいになるのか」「設備の更新も補助の対象になるのか」といったご質問を多くいただきました。説明会の資料では、想定される設置コストを示していましたが、実際には屋根の形状など設置する条件によって大きく異なるため、説明の難しさがあります。参考コストとして、多少余裕を見た金額を示した場合には「自己負担額が高い。」と意見をいただくこともありますが、一方で現実に近い数字を示した場合には、逆に実際の見積金額の方が高くなってしまう可能性もあります。

 太陽光発電の導入コストは多くの方々か注目する重要なポイントです。市としてもできる限り説明しつつ、実際のコストについては見積もりをとっていただくように、前述のWEBサイトの活用などを促しているところです。

 また、山形町総合文化祭では住宅用太陽光発電の無料見積もりコーナーを設置し、当市が市民と事業者の間に入って、見積もりを依頼するという取り組みも行いました。これによって11件の見積もり依頼の申し込みがありました。こうした取り組みを通じて、市民の方々の疑問に答えられるように努めています。

今後、さらなる脱炭素先行地域の取り組みによってどのような効果を狙っていますか?

関本氏 脱炭素先行地域のKPIとしては、雇用機会の確保や農林業の振興を挙げています。太陽光発電事業や風力発電事業はもちろんですが、木質バイオマス関連企業や林業従事者の間で雇用者が増えることを望んでいます。

 例えば現在、木材加工の際に発生する「バーク」と呼ばれる樹皮は、産業廃棄物として処分されていますが、熱供給の燃料として活用できるようになれば、市の資源を無駄なく活用できるでしょう。市の資源を有効活用して産業が活性化するように取り組んでいきたいと思います。

また、久慈市は令和3年に積水化学工業株式会社と「地方創生に関する相互連携協定書」を締結しました。この協定に関連して、脱炭素先行地域の取り組みでは、定置型蓄電池の導入・検討に関するサポートをいただいています。また、積水化学工業株式会社が久慈市で取り組まれている可燃ごみをエタノールに変換する先進的な技術の実証でも連携しており、今後もこのような協力関係の下、地方創生及び地域脱炭素の推進に取り組んでいきたいと思います。

伊藤氏 蓄電池に関するご協力の一例としては、蓄電池を導入時のメリットを算出するシミュレーションツールの提供を行っています。蓄電池の設置工事を担う工事店にこうしたツールを提供して、見積もり提案などの際に活用いただいています。太陽光と蓄電池を併せて導入すると、夜間や雨天でも貯めた電気を利用できるようになるため、使用する電気に占める再エネ比率を向上できると期待しており、現在久慈市の公共施設では「太陽光パネルと蓄電池による電力自給自足」をテーマに実証も行っています。


* このあと、「廃棄物を活用した新たな実証事業」についてや、BR技術についてなど話はつづく。


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