さいたま市サーマルエネルギーセンターの完成イメージ(出典:さいたま市)
国の「2050年カーボンニュートラル宣言」に先駆け、令和2年7月にゼロカーボンシティを表明するなど、脱炭素に積極的な取り組みを続けているさいたま市。令和4年4月には、環境省による第1回脱炭素先行地域に選定された。
さいたま市は、ごみ発電や太陽光発電といった地域のエネルギーリソースを活用し、再エネ等を効率よく地産地消する「さいたま発の公民学によるグリーン共創モデル」を目指している。今回は、環境共生部環境創造政策課ゼロカーボン推進係の山﨑静一郎主査に「さいたま発の公民学によるグリーン共創モデル」について詳しく話を聞いた。
山﨑氏 「さいたま発の公民学によるグリーン共創モデル(以下、グリーン共創モデル)」とは、本市が環境省の脱炭素先行地域の第1回公募において提案した取り組みです。本市が中心となって、市内の埼玉大学、芝浦工業大学、東京電力パワーグリッド株式会社埼玉総支社と共同提案を行いました。
さいたま発の公民学によるグリーン共創モデルの事業全体イメージ(出典:さいたま市)
対象としたエリアは大きく分けて、公共施設群、公共施設の一部として再編を予定している中央区再編エリア、両大学キャンパス、商業施設や住宅地を想定した美園地区周辺の地域共創エリアの5つです。これらのエリア全体に対して、再生可能エネルギー(再エネ)を最大限導入するとともに、送配電ネットワークを活用したエネルギーマネジメントを実施する計画を策定しました。
さいたま発の公民学によるグリーン共創モデルの対象とする地域(出典:さいたま市)
具体的には、公共施設の屋根や駐車場、ため池、大学の敷地内などに太陽光発電設備や蓄電池を設置し、自家消費を行います。また、ごみ処理施設については、発電した電力の一部を公共施設等へ自己託送するとともに、残りの電力については安定電源として電力供給に役立てることなどを計画しています。その中で発生する余剰電力や不足する電力については、5つのエリア全体でエネルギーマネジメントを行い、送配電ネットワークの負荷平準化や最大効率化を図るというものです。こうしたエネルギーマネジメントによって、地域脱炭素の“都市型モデル”を確立したいと考えています。
山﨑氏 一般的に、都市においては、再エネ発電設備を設置するのに適した遊休地などが少ないのが現状です。そのため、再エネ発電としても期待できるごみ発電は、地域脱炭素において中心的な役割を占めると考えています。
今後は、ごみ発電は単なるごみ処理施設ではなく、再エネ等を生み出すエネルギーリソースとして捉えられていくでしょう。つまり、ごみ発電のあり方が変化しているということです。地域脱炭素や循環型経済を実現するという側面から、ごみ発電はカーボンフリーなエネルギーリソースとして有効活用されるべきだと思います。
山﨑氏 本市では「グリーン共創モデル」の一環として、ごみ発電による再エネ電力等を自己託送し、公共施設で使用することを計画しています。これによって、公共施設における電力の使用に伴うCO2排出量を低減できると見込んでいます。また、ごみ発電のカーボンフリー電力については、大学や民間企業などを含めた地域での活用に向けて検討を進める予定です。
実は、脱炭素先行地域に提案する以前から、ごみ発電の電気をもっと地域で有効活用したいと考えていました。というのも、本市は、西部環境センターと東部環境センターを統廃合し、新たにサーマルエネルギーセンターを整備し、令和7年度から供用を開始することを予定しています。
さいたま市サーマルエネルギーセンターの完成イメージ(出典:さいたま市)
サーマルエネルギーセンターを始めとするごみ焼却施設で発電した電気を公共施設のCO2排出量を削減するために活用するように、早くから検討を進めてきたことで、脱炭素先行地域の提案に役立てることができました。
環境共生部環境創造政策課ゼロカーボン推進係 山﨑静一郎主査(左)
山﨑氏 本市では、平成21年から電気自動車などの普及拡大に向けた課題の解決に取り組む電気自動車普及施策「E-KIZUNA Project」を皮切りに、内閣府の地域活性化総合特区やSDGs未来都市に選定されるなど、環境分野における取り組みに力を入れてきました。令和2年7月には、国の「2050年カーボンニュートラル宣言」に先駆けてゼロカーボンシティ宣言を表明しました。
こうした積み重ねの中で、公共施設の脱炭素化にも早くから取り組み、ごみ発電の活用方法についても検討を重ねてきました。その一環として、教育機関や民間企業などのステークホルダーの皆さんと協議をするうちに「一緒に脱炭素先行地域を目指そう」ということになり、提案を決めました。
以前から本市の美園地区においては、住宅地における再エネの地産地消などを目指す「スマートホーム・コミュニティ街区」の整備に取り組んできました。また、民間の商業施設なども脱炭素化に取り組むとコミットしていただいており、こうした背景も、脱炭素先行地域の応募において大きな後押しになりました。
* このあと、「グリーン共創モデル」の具体的な取組や課題、市民とのコミュニケーション、他の自治体へのメッセージへと話はつづく。