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2021.03.24
(3)官民連携方策 参考)将来事業スキームの事業性

①地域エネルギー事業との連携を念頭にした事業スキームの例

試算条件

  • 処理施設規模: 120t/日、228t/日、210t/日、300t/日の4施設の相互支援
  • 発電能力規模: 計24,350kW(2,650kW、9,700kW、6,000kW、5,230kW)
  • 域内需要規模: 約10MW(学校・公共施設等を想定)
  • 電力取引単価: JEPX=8.4~13.9円/kWh(月単位で設定)
  • 廃棄物発電施設からの調達=9円/kWhと設定
  • 域内需要家への販売=12.5~27.1円/kWh(季節別時間帯別で設定)

試算結果

  • 総ごみ処理量:     264,928t/日(内ごみ融通量: 50,605t/年)
  • 総発電電力量:   118,629MWh/年
  • 総地域需要電力量: 51,118MWh/年


  • 事業収入:域内需要家への電力販売 807百万円 *1
  • 同 :JEPXへの電力販売        219百万円 *1
  • 計(A)             1,026百万円


  • 事業支出:廃棄物発電の調達     680百万円 *2
  • 同 :JEPXからの電力調達        29百万円 *1
  • 同 :施設間のごみ運搬に係る燃料費 25百万円 *1
  • 同 人件費              63百万円 *3
  • 同 車両費              16百万円 *4
  • 同 :事業運営費           60百万円 *5
  • 同 :託送料金           153百万円 *6
  • 計(B)             1,026百万円
  • 地域エネルギー事業者(小売電気事業)としての事業収支: (A)-(B) 0百万円
  • 清掃工場収支(4施設合計)(C) + 110百万円 *7
  • 事業全体収支:(A)+(C)-(B) 110百万円

*1:令和二年度廃棄物処理システムにおける低炭素・省CO2対策普及促進方策検討調査及び実現可能性調査委託業務におけるシミュレーション結果より
*2:令和二年度廃棄物処理システムにおける低炭素・省CO2対策普及促進方策検討調査及び実現可能性調査委託業務におけるシミュレーション結果に基づく4施設からの売電電力量に設定価格を乗じて算出
*3:運転者の年間人件費、年間稼働日数、1日の稼働時間を設定し、人件費原単位3,100円/人・時間として試算
*4:収集運搬車両(2t車)の購入費、耐用年数、年間稼働日数、1日の稼働時間を設定し、車両費原単位780円/台・時間として試算
*5:過去の廃棄物発電ネットワーク実現可能性調査から実勢価格として設定
*6:東京電力パワーグリッドの託送料金単価により試算
*7:相互支援による廃棄物発電施設の売電収入総額の増加分を試算して計上(4施設全体のごみ処理量は変わらないため、処理及び維持管理費は変わらないものとした)



②地域産業等での資源エネルギー循環を中心に据えた事業スキームの例

韓国では、清掃工場からの蒸気を化学工場等へ供給・利活用するプロジェクトの普及が進んでいます。

プロジェクトの実施にあたっては、政府による国家エコ・インダストリアル・パーク計画(EIP計画)に基づき、認定された地域において自治体、研究者、企業の参加により「地域EIPセンター」と呼ばれる非営利の中間組織が設置され、事業のマスタープランの提案をはじめとして、事業実現に向けた中立な立場での交渉仲介や、事業障壁の緩和、参加者の公平な利益分担の確保などの役割を果たしていることが大きいと指摘されています。

注)大西悟「韓国・地域EIPセンターが促す焼却熱の工場利用の実態」廃棄物資源循環学会誌,Vol. 30, No. 4, pp. 270-276, 2019より


蔚山市のプロジェクトでは、一般廃棄物焼却炉からの蒸気を化学工場へ供給・利活用する事業について、僅か1年足らずの期間で投資回収(焼却炉は既設のため、初期投資は蒸気配管敷設等の経費)が達成され、高い利益を上げていることが報告されています。

韓国蔚山工業団地における清掃工場排熱(蒸気)供給事業の概要

出典)令和元年度第1回シンポジウム-地域循環共生圏形成における 廃棄物エネルギー利用施設の果たす役割と可能性-「廃棄物の熱エネ ルギー利用の高度化の可能性」藤井実(国立研究開発法人国立環境 研究所)


こうした事例は、立地条件を含めた廃棄物処理施設と地域産業とのマッチングと、それを仲介する組織体の存在、及び、FS調査を始めとする事業確立のための国等の行政予算がそろうことで、廃棄物エネルギーの高効率利用が可能であることを示唆しています。

韓国における「地域EIPセンター」は、将来モデルにおけるコーディネーターの機能を果たす組織体として見ることが可能であり、事業全体の省CO2化+事業性向上を目的とする複数の主体が関与したコーディネーターの可能性が示唆されます。