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2021.03.24
(2)地域間連携方策 ―連携処理・ネットワーク化―

来るべき将来社会においては、社会構造のコンパクト化・ネットワーク化・スマート化の進展により、地域経済循環の確立や、地域で考え地域で支える体制づくりが期待されています。こうした将来社会の姿に対応し、人口減少・財政縮小社会における持続可能な廃棄物処理システムとするための一つの方策として、複数の市町村や組合が相互に連携処理する体制を取り、脱炭素性・経済性の観点からの全体最適化を目指すことが考えられます。

具体的には、個々の処理単位(市町村、一部事務組合等)が、地域特性(都市特性、地域産業特性、行政方針等)に応じて複数連携(ネットワーク化)することにより、ごみ処理及び資源循環・エネルギー利活用の観点から最適化(全体としての脱炭素・省CO2化、財政負担最小化等)が図られるシステム像が考えられます。またこれらのシステムを形づくる背景として、ICT等のネットワーク技術の活用や地域資源循環産業・エネルギー事業などとの連携を確保することにより、地域に根差した効率的・効果的な社会システム構築へつながることが期待されます。またこのようなネットワーク体制は、災害時の廃棄物処理の迅速化にも資するものと考えられます。

実現にあたっては、市町村間、施設間、資源エネルギー需給間で各種調整を担うコーディネーターが必要となるため、個々の地域特性に応じて適切な主体がコーディネーターの役割を担うことが期待されます。



連携処理・ネットワーク化による事業スキームのコーディネーターとしての可能性を考えるため、現在の廃棄物処理事業を取り巻く様々な主体について現状と今後の期待等を整理しました。

地域の実情に応じて適切な主体がイニシアティブを取って、調整役を担っていくことが期待されます。

注1)https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/toshisaisei/chusuchukaku/chuusuuchuukaku_gaiyou.pdf
注2)一部事務組合、広域連合、中核都市の数値データは一般廃棄物処理実態調査平成30年度実績。都道府県のデータは環境省「産業廃棄物行政組織等調査報告書(平成29年度実績)令和2年3月」及び「廃棄物処理センターの指定及び事業実施状況(令和2年7月15日現在)」
注3)「長期包括運営委託(DBO等も含む)事業の実態調査報告書(平成28年12月 一般社団法人 廃棄物処理施設技術管理協会)」
注4)令和元年度廃棄物処理システムにおける低炭素・省CO2 対策普及促進方策検討調査及び実現可能性調査委託業務報告書
注5)資源エネルギー庁HP「登録小売電気事業者一覧(令和2年12月3日現在)」
注6)環境省「産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(平成29年度実績)」における中間処理





連携処理・ネットワーク化による事業スキームは、広域化・集約化を進める複数のごみ処理事業において、いずれかの主体がコーディネーターとなり、より積極的な調整を行うことで実現される将来モデルといえます。

まずはごみの適正処理確保のための調整からスタートし、関係域内のごみ処理事業全体のコスト最小化や資源・エネルギー回収の最大化、さらには資源・エネルギーの地域利活用の推進まで、様々なレベルでの調整機能が考えられることから、都道府県、市町村、民間事業者等が、それぞれの目標やノウハウを活かした能力を発揮することで、最適な規模・範囲での連携・ネットワーク化が進むことが期待されます。

連携処理・ネットワーク化された事業の運営には、円滑な情報集約・解析・評価等の機能も必要となることから、進展が著しいICT技術も十分に活用しながら進めていく必要があります。



【参考】連携処理・ネットワーク化による事業効果の試算例

連携処理・ネットワーク化による将来事業スキームの実現可能性を検討するため、ある地域をモデルとしたシミュレーションを行った調査事例を紹介します。

調査内容

<調査内容>

一定の地域内に位置する4施設において、現状の防災機能、周辺施設への熱供給、売電等を確保することを前提に、点検補修時等は互いの施設でごみを融通処理することでの、運転の効率化、エネルギー回収の最大化を図ることを念頭に、施設間連携処理におけるごみ処理融通方策の効果についてシミュレーションを実施し、連携処理の成立を左右する脱炭素性(エネルギー回収量、CO2排出量)及び経済性の観点から評価を行いました。

シミュレーションの条件は以下のとおりとしました。

  • 各施設にとってメリットがあるように、個別施設の経済性(収支)最大化を目的関数とする。
  • ごみ融通は一方的なものとせず相互支援とし、年間での送出し量と受入れ量は等量とする。
  • 各施設の実績に基づいて処理を実施し、周辺への エネルギー供給を行う。
  • 余剰電力は市場価格で売電する。
  • 電力(売電量・買電量)、燃料(焼却処理に係る助燃)、輸送(ごみ融通に伴う施設間輸送)の変動から経済性とCO2排出量を評価する。

シミュレーションの結果は以下のとおりとなりました。(輸送は現状の費用・排出量をゼロとして試算)

◎ CO2排出量は、全施設合計でCO2排出量が約15%程度削減効果向上。(ごみ融通によって、買電及び輸送燃料による排出量は増加する傾向にあるが、ごみ融通による発電電力量の増加とそれに伴う売電電力量の増加が排出量の低減に大きく影響)

◎ 経済性は、現状ケースよりも相互支援ケースの方が22%(約1億円)向上。

(出典)令和元年度廃棄物処理システムにおける低炭素・省CO2対策普促進方策検討調査及び実現可能性調査委託業務報告書





【事例】